悪いのは誰だ!?

ページID1008371  更新日 令和6年1月24日

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6月からアメリカザリガニとミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)等が条件付特定外来生物に指定されましたので、それについてブログを書いてみようと思います。アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメはどちらも田んぼや沼で見かけたり、縁日やペットショップで売られている皆さんよーくご存知の生き物です。そのザリガニとアカミミガメが条件付きではありますが、特定外来生物になりましたよというお話です。色々と難しい話もあるので噛み砕きながらお話しできればと思います。

まず、特定外来生物とは何ぞやという話ですが、外来生物とは元々日本にいなかった生物(動物も植物も)のことです。その中でも「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(2004年~)」で指定された生物のことを特定外来生物と言います。難しい話になってきましたがもう少々お付き合いを。環境省によるとこの法律の目的は生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資することとなっています。また、そのために問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取り扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うこととなっています。

すごく簡単に言うと、日本の自然環境や人の生活を守るために特に大きな影響を与えそうな外来生物を法律で指定して規制をしたり防除したりしているということです。2023年6月1日現在、特定外来生物に157種が指定されています。代表例をあげてみますと。

  • アライグマ:ペットブームで持ち込まれ、脱走したり、飼いきれず逃がしたことにより定着。在来生物や農作物に深刻な被害をもたらしている。
  • ウシガエル:食用として持ち込まれたが、養殖場から逃げ出したものが定着。在来生物に深刻な被害をもたらしている。
  • オオクチバス(ブラックバス):釣りを楽しむために放流されたものが定着。在来生物に深刻な被害をもたらしている。
  • セアカゴケグモ:運輸の過程でコンテナや貨物に付着したものが入り、そのまま日本全国に荷物と一緒に運ばれて定着。噛まれると毒によって発熱や頭痛など全身症状が出る。

逃がしたり、放流したり意図的に広げたものもあれば人の往来によって意図せず広がったものもありますが、いずれも人によって持ち込まれたことがわかります。

次に規制についてですが、飼養、栽培、保管、運搬、輸入を規制となっており、これらを行う場合は全て許可が必要となります。つまり、特定外来生物を許可なく生きたまま手元に置くこと、移動させること、配ったり売買すること全てがダメということです。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金という重たいものです。動物園ではアライグマやカミツキガメなどの特定外来生物を飼育していますがもちろん全て許可を得ています。

えー、家でミドリガメ飼ってるんだけど…!!!学校でザリガニ飼っているだけど…!!!罰金300万円!!!!とドキッとした方、ご安心ください!ここで「条件付」が出てきます。実は以前からアメリカザリガニとミシシッピアカミミガメは他の外来種と比べても同じかそれ以上に深刻な被害をもたらしていることは知られていました。しかし、飼育している人や生業にしている人が他の外来種に比べて圧倒的に多いことから規制をかけるのが難しいという現実がありました。

例えば自宅でアカミミガメを飼っていた場合、特定外来生物に指定されると、環境省に申請書を提出して飼育許可を得なければならないということになります。それもただ飼っていますというものではなく、飼育者、飼育目的、飼育場所、飼育施設の構造、飼育頭数、個体識別のマイクロチップの届け出など非常に大変な申請となります。となると、それまで飼っていた人や業者が規制前に一斉に逃がしてしまったり、行き場のない個体が世の中に溢れたりと余計に問題を大きくしてしまう危険性がありました。また、子供がザリガニを近所の池で捕まえて家に持って帰っただけで法律違反になってしまうなんてことにもなります。

そうならないために「条件付特定外来生物」となりました。規制の内容は以下のようになります。

<規制対象>

  • 野外に放したり、適切でない施設で飼って逃げられたりすること
  • 売買することや売買目的で飼育すること
  • 無償であっても不特定多数に配ること
  • 加工用や冷凍用であっても商業目的で飼育すること

<規制対象外>

  • 一般家庭で飼うこと
  • 学校や施設で飼うこと
  • 捕まえて持って帰ること
  • 責任をもって飼える人に渡すこと、渡されること

実は一般の人にとってはそこまで厳しい規制にはなっていません。家や学校で飼うことは問題ありませんが、逃げられないようにきちんと飼うことを徹底しましょう。捕まえて持って帰ることも問題ありませんが、連れて帰ってきたらやっぱり飼うのをやめたはできません。という結局のところ、これまで通り飼うならきちんと責任をもって最後まで飼いましょうという当たり前のことだけです。この当たり前ができないから不幸な事態が起こるのですが…。アメリカザリガニの寿命は5年、アカミミガメは30年以上生きると言われています。アカミミガメを小学生で飼い始めたとしたら社会人になってからも一緒に過ごすことになります。

※今更ですが条件付きでないウシガエルやブラックバスは生きたまま持って帰ったり移動させると犯罪なので充分注意してください。アライグマは保護であっても飼うのは絶対ダメです。

今回の規制ではここまで広がってしまったアカミミガメやザリガニの被害を防ぐという意味ではなかなか難しいと個人的には思います。しかし、外来生物やペットの問題を社会に浸透させるという意味ではとても大きいと思います。また、現在飼われている動物たちが寿命を全うする頃には、条件付も取れて本格的に規制されていく流れになっていくのではないかと思います。

昨今のメディアで外来生物をクローズアップしているものをよく目にします。その影響からかカミツキガメやアカミミガメの展示の前で「外来種」という言葉をよく耳にするようになりました。さらに、その後に「危険なやつ」「悪いやつ」「駆除」などの言葉が続きます。これは大人に限らずお子様もよく口にしています。社会に外来生物問題が浸透してきていることは大変喜ばしいことだと思います。

アメリカザリガニは「人の食用」として輸入されたウシガエルの「エサ用」として日本に持ち込まれました。そして、ウシガエルもアメリカザリガニも利用価値がなくなると野に放され、特定外来生物に指定され厄介者として駆除されています。彼らが厄介者になってしまったのはなぜでしょうか。本当に「悪いやつ」は誰なんでしょうか。外来生物の被害も深刻ですが、外来生物問題の背景には必ず私たち人の存在があるということを忘れてはなりません。過去に学び、新たな不幸が生まれないようにするにはどうしたら良いかみなさまにも考えてもらえれば幸いです。

少年時代は駄菓子屋で50円のイカを買ってザリガニ釣りに繰り出す日々を過ごしていた 中本

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