第3回 ヒタチノヒトタチ 脚本家 櫻井剛さん

ページID1011750  更新日 令和6年8月14日

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イラスト:ヒタチノヒトタチ ロゴ

ヒタチで活躍する さまざまなヒトタチに インタビュー!

 「東京ブギウギ」で一世を風靡した戦後の大スター、笠置シヅ子をモデルにしたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。このドラマの脚本を担当されたお一人が、日立市出身・在住の脚本家、櫻井剛さんです。
 今回は、櫻井さんに『ブギウギ』の脚本を手掛けるきっかけや脚本家としての活動について伺いました。

 

写真:櫻井剛さん1

【プロフィール】

櫻井 剛(さくらい つよし)

1977年 日立市生まれ。専門学校東京ビジュアルアーツ映画演出専攻卒業。
2001年 『青と白で水色』で日本テレビシナリオ登竜門大賞を受賞。
2005年 映画『ゴーグル』で監督・脚本を手がける。
2011年 テレビドラマ『マルモのおきて』で本格的に脚本家デビュー。
以後、『ビギナーズ!』、『ミス・パイロット』、『表参道高校合唱部!』、テレビアニメ『ONE PIECE』など、数多くの人気ドラマを執筆。
2022年に放映されたNHK夜ドラ『あなたのブツが、ここに』では、第60回ギャラクシー賞を受賞。
2023年10月~2024年3月に放送されたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』では、第9週(41回)~第10週(50回)及び第13週(61回)~第16週(76回)、第20週(92回)~第22週(106回)の脚本を担当。

 

「ずっと“朝ドラ”の脚本を書いてみたかった」

―『ブギウギ』の脚本を手掛けることなったきっかけは?

 以前、NHK夜ドラの『あなたのブツが、ここに』というドラマの脚本を書いたのですが、その時のプロデューサーの方が『ブギウギ』の制作を担当されていて、「今度はぜひ朝ドラを書いてみませんか?」とお誘いいただきました。
 ずっと朝ドラの脚本を書いてみたかったので、とても嬉しかったですし、気合いが入りましたね。

 

―『ブギウギ』の脚本は、二人体制で書かれているそうですね。

 はい、メインの脚本家が足立紳(しん)さんで、僕は第9・10週と第13~16週、第20~22週の脚本を担当しています。朝ドラの脚本は一人の脚本家が書くことが多いですが、場合によっては二人体制、三人体制になることもあります。
 今回の場合は、足立さんが作り上げたそれぞれのキャラクターを引き継ぎつつ、僕ならではの表現で登場人物の心の動きや人間味あふれる姿をできるだけ丁寧に描きました。

 

― 朝ドラの脚本を書くのは、大変ですか?

 そうですね、担当する週の一話一話を必死で書いていました。『ブギウギ』の脚本は二人体制で書いていましたので、ストーリーに違和感が出ないよう、足立さんや各週を担当する監督さんたちと打合せを重ねて脚本を仕上げました。
 でも、部屋に缶詰め状態とか、徹夜をしてまで書くということはなかったです。それこそ若い頃は寝ないで脚本を書くことも多かったのですが、30代の終わり頃からは体力がなくなってきて、もう徹夜はできないですね(笑)

 

写真:櫻井剛さん2
『ブギウギ』の脚本は、「一話一話、大切に書かせてもらった」と櫻井さん

映画を作る仕事がしたいという思いから脚本家の道へ

― そもそも、どうして脚本家になろうと思ったのですか?

 子どもの頃から映画が好きで、映画を作る仕事をしたいという思いから脚本家につながっていったという感じです。
 昔、常陸多賀に2つ映画館がありましたけど、同級生がそこの経営者のお孫さんで、小学校の頃からただで映画を観させてもらっていたんです。中学・高校時代もよくその映画館に行ってはいろんな映画を観ていました。高校の頃はちゃんと自分でチケット買って行きましたけどね(笑)
 そんなことから、将来、映画監督になりたいと思うようになって、高校卒業後、映画制作の専門学校に進みました。

 力試しで書いたドラマ脚本が大賞を受賞

 専門学校卒業後、力試しで書いたテレビドラマの脚本で賞を取って、そこから脚本家の道が開けました。受賞後しばらくは、賞金で自主映画を作ったり、好きなことを続けていたのですが、脚本を一人でコツコツ書くという工程が好きで得意だったし、映画監督よりは脚本の方がまだ芽があるかなと思い、脚本1本に絞ってやっていく選択をしました。

 

― 脚本ってどのように書くのですか?

 人によって違うと思いますが、僕の場合は頭の中で映画やドラマを見るみたいに再生し、それを書き起こすという感じです。
 とにかく頭の中で何度も何度も物語を再生して、話がスムーズに流れていないな、おもしろいストーリーにならないなと思ったら、視点を変えたり、シーンの順番を入れ替えてみたりしながら書き直すという作業を繰り返します。そうやって話がおもしろく展開していったときにはとても嬉しくなりますね。

 

― どのようなところから着想を得るのですか?

 僕の場合は、「あ、これドラマに使えるな」とか思うことはあまりなくて、普段の生活の中での自分の体験をヒントにして書くということが多いですね。
 例えば、『あなたのブツがここに』という、コロナ禍を生きる女性を描いたドラマでは、自分の生活もコロナの影響が多くありましたから、「そう言えば、あの時こんな気持ちだったな」などと思い起こしながら、コロナ禍でストレスを感じたこととか、意外に楽しかったことなどをヒントにして書きました。

 パイロットが主人公の脚本は空港で執筆

 以前、女性パイロットが主人公のドラマの時は、空港に行って脚本を書きました。やっぱり、部屋で書いているのと空気感が全然違いますよね。パイロットなど航空会社の制服を着ている方もたくさんいますし、旅の高揚感とか、別れなどの人生模様も垣間見られたり…。
 ホームドラマのような作品であれば、自分の経験で十分なのですが、何か脚本の手掛かりになるようなものがほしい場合は、少しでも作品のテーマに近い環境に身を置いて書くようにしています。

 

写真:櫻井剛さん(4)
「脚本家」という仕事の面白さについて熱く語る櫻井さん

日立で生活している方がずっといい仕事ができる

― 日立市でお仕事をされているのはなぜですか?

 以前は東京で生活していたんですが、子どもが小学校に上がるタイミングで妻と子どもは日立に住むことになりました。日立は海も山もあって、住環境がいいですからね。
 僕は松戸に借りた仕事場と日立の家を行ったり来たりしていたのですが、コロナの影響でリモートワーク中心になったので、もう東京圏に住む理由がなくなりました(笑)
 日立にいて、不便さは全く感じないですね。実家もありますし、家族と一緒に生活している方がずっといい仕事ができます。僕はよく市内のコーヒーショップで仕事をするんですけど、そこに行く時ドライブしながら眺める海の景色は、何度見ても本当に素晴らしい。日立で生活して、視野も広がったと思います。

 

家族との生活での“気付き”を作品に反映していきたい

― 脚本家として今後どのような活動をしていきたいですか?

 僕はヒューマンドラマとかホームドラマが得意分野だと思っているので、自分が日立で家族と生活する中での体験とか“気付き”のようなものを作品に反映できればいいなと思っています。

 

― 最後に、日立の若者たちにメッセージをお願いします。

 若い時の僕は、なんか格好つけちゃって、映画が好きでやってみたいと思っても一歩踏み出せない時期があったりして、20歳になってやっと専門学校に入ったんです。若い人たちには、興味があるとか、自分が好きだと思っていることがあったら、とりあえずチャレンジしてみることがすごく大事だよって言いたいです。
 覚悟なんて決めなくていいし、合わなければやめて別の道に行ってもいいと思います。まずはやってみたいと思ったことを始めてみて、走りながら自分にとってのゴールを見つけていけばいいんじゃないかと思います。

 

写真:櫻井剛さん3

以前、常陸多賀にあった映画館に、よく通っていたという櫻井さん。「シネコン(大きな映画館)にはない独特な雰囲気が好きで、自然と“いつか映画を作る仕事がしたい”と思うようになっていました」と学生時代のエピソードを語ってくれました。

 

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