【ひたちのひととき】ひたち盆FIRE実行委員長 坂本修一さん
飲食業の傍ら、日立新都市広場に大きな櫓(やぐら)を立て、三世代で夏祭りを楽しめる「ひたち盆FIRE」の実行委員長として、日立に新たな夏の風景をつくり続けています。
その立ち上げの背景や今年の見どころ、そして坂本さんが未来の子どもたちへ残したい思いを伺いました。
バンドマンからカフェオーナーへ
日立市出身の坂本さんは、中学卒業後に地元を離れ、神奈川県で学生生活を送りながら、バンド活動に打ち込みました。担当していた楽器はドラム。大学在学中に活動が本格化し、坂本さんは音楽漬けの日々を送ります。
一方で、母親が地元で定食屋を営んでいたことや、長年の飲食店での経験から、「将来はカフェをやりたい」という思いが芽生えていました。
2009年にバンド活動を引退した坂本さんは、2011年12月、海を一望できる駅構内のカフェ「SEA BiRDS CAFE」をオープンします。
日立駅は、世界的建築家・妹島和世さんが監修し、グッドデザイン賞やブルネル賞駅舎部門最優秀賞を受賞した建築物。
まるで海に浮かぶようなカフェは大きな話題となり、市民や観光客が訪れる人気スポットとなりました。
地域への恩返しとして始まった「ひたち盆FIRE」
オープンから10周年を迎えた頃、坂本さんは「地域に恩返しできるイベントを」と考え始めます。
当初はお祭りの開催を構想していましたが、コロナ禍で実現できずにいました。
そんなとき、地元の同級生であり、市内の飲食店仲間でもある友人に相談すると、「一緒に祭りをやろう!」と声を上げてくれたのだそうです。
お祭りの話が動き出したのは2023年4月。準備期間はわずか3か月でしたが、同年9月に
第1回「ひたち盆FIRE」が開催されました。
当初10名に満たなかった実行委員は、回を重ねるごとに増え、現在は20名以上。
本業の合間を縫い、週1回の定例会議を続けながら、限られた時間で祭りをつくり上げています。
世代を超えて楽しめる、みんなの夏祭りに
坂本さんは、自身の子ども時代の記憶を振り返ります。
「地域の子ども会で太鼓を叩いたり、盆踊りに参加したり、夏のお祭りは本当に楽しい思い出でした。自分の子どもにもその楽しさを体験させてあげたいと思いましたが、コロナ禍というのもあり、そういう体験をしたことがなくて。夏休みのお祭りの思い出は一生残るものなので、そういう場をなくしたくなかったんです」
各地で様々なイベントが開催されていますが、年代や趣味など限られた人に分かれてしまいがち。
そうした面でお祭りは、子どもから高齢者まで、幅広い世代が一緒に楽しめる場であることから、坂本さんは盆踊りを軸にしたお祭りを選んだといいます。
「見る祭り」から「参加する祭り」へ
実行委員を立ち上げた当時、多くの人から群馬県桐生市の「桐生八木節祭りはすごい」と話を聞いていた坂本さん。
日立市と桐生市は親善都市で、以前からお神輿の手伝いなどを通じた交流もあったことから、実行委員のメンバーと実際にお祭りを見に訪れました。
「3日にも及ぶ祭りには、県外からも踊りの団体がたくさん集まり、街全体が盛り上がりをみせていました。ただ祭りに訪れるよりも、一緒に踊った方がもっと楽しく過ごせると感じたので、これが定着すれば、地元を離れた人もその時期だけでも帰ってくるきっかけになると思いました」
そう話す坂本さんは、桐生市の協力を得て、2025年に「日立八木節」を制作することにしました。
曲はそのままに、歌詞を鉾田市出身で「ねばねば音頭」を作詞・作曲した淺野勝盛さんに日立版の制作を依頼。こうして「日立八木節」が誕生しました。
ひたち盆FIRE2026の見どころ
第4回目を迎える「ひたち盆FIRE2026」は、8月29日(土曜)30日(日曜)に開催されます。
今回も来場者みんなが参加できる「日立八木節」をはじめ、本気の綱引き対決を行う「盆ファイト」や、子どもたちによる和太鼓演奏「盆キッズ」、多彩なダンス発表や芸能人ゲストなど、2026年も見どころ満載の企画が予定されています。
お祭りの楽しみの一つであるグルメも、テント出店やキッチンカーなど、多彩な店舗が会場を盛り上げます。
出店者やイベントの詳細は、ひたち盆FIRE公式Instagramで確認できます。
中でも坂本さんが注目してほしいと話すのが、子どもたちによる和太鼓演奏「盆キッズ」です。
参加人数は昨年より増え、今年は35名に。小学生から高校生まで幅広い年代の子どもたちが参加しており、中には昨年に続いて演奏する子もいるそうです。
「子どもたちが一生懸命練習した、力強い演奏をぜひ見に訪れてほしい」と坂本さんは話します。
子どもたちへ残したい風景

最後に、坂本さんは「子どもたちへ残したいもの」について語ってくれました。
「僕が子どもの頃は、毎年お祭りがあるのが当たり前でした。屋台があって、美味しいものを食べて、みんなで賑やかに過ごす。その風景をこれからも続けていきたいし、見て育った子どもたちが、次の世代へつないでくれたら嬉しい。それが当たり前の景色として残っていくことが理想です」
坂本さんが目指しているのは、特別な一日をつくることではなく、子どもたちにとって「毎年楽しみにする夏の風景」を残すこと。
日立の街に生まれた新たな夏の風物詩は、少しずつ世代を超えて受け継がれようとしています。
プロフィール
坂本 修一(さかもと しゅういち)
ひたち盆FIRE実行委員長/株式会社エスアンドエス 取締役
1981年生まれ、日立市出身。2011年11月に株式会社エスアンドエスを設立。常磐線日立駅構内のカフェ「SEA BiRDS CAFE(シーバーズカフェ)」をはじめ、らーめん酒場田島屋・肉山日立を運営。2023年に地元の仲間とともに「ひたち盆FIRE」を立ち上げる。
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